タイトルはおっきめにつけたが、ネタは東大松尾研が生成 AI のプレスリリースで「オープンソース」というワードを使ったことに関するあれこれ。
実際に適用されたライセンスは CC BY NC 4.0 で、オープンであるが「商用利用不可」というもの。これは「商用利用不可」という制限があるので OSI がいうところの「オープンソース」ではない。
そういったわけで、プレスリリースされた直後から、その点を指摘する声が多数あがった。
いつもの話と言われればそうなんだが、今回は世間的に注目を集めている研究室の生成 AI に絡んでいるという点で従来の諍いみたいなものと違っていたように思うので、その点を意識してあれこれ書く。
なお、顛末を先に書いておくと、松尾研がプレスリリースに訂正を入れるということで騒動は決着ついた。ただし、訂正後はデータ公開云々みたいな話はどこにも記載されておらず、この点も興味深かった。
今回の件がこれまでの論争と違っていたのは、「細かいこと(OSI の定義に従っているかどうか)にこだわる必要があるのか?」という正面切った反論が出てきたこと。
open source はオープンソース(狭義)の提案以前から使われていた
興味深かったのは、これに伴ってよく出てくる「オープンソースという言葉は、オープンソースな人々が初めて使った言葉なので、OSI に従うべきだ」みたいな都市伝説的な言い分が完全に論破されたこと。
いかにも SNS 。例えば、このスレあたり参照。

うみゆきさんが引用した元記事はこちら。

CALDERA. ANNOUNCES OPEN SOURCE CODE MODEL FOR DOS
DR DOS. + the Internet = Caldera OpenDOS
PROVO, Utah Sept. 10, 1996 Caldera. Inc. today announced that it will
openly distribute the source code for DOS via the Internet as part of
the company’s plans to encourage continued development of DOS
technologies and applications, further leveling the playing field for
software developers worldwide. This effort, targeted to benefit both
individual developers and industry partners, follows Caldera’s
commitment to embrace and fund an open software environment. Caldera
also announced plans for internal development and marketing of DOS,
including a new product called Caldera OpenDOS .“DOS continues to meet the technical and financial requirements of a
large portion of the computing industry, especially in the areas of
network computing devices, specialized game devices and embedded
systems,” said Bryan Sparks, President and CEO of Caldera, Inc.
“Publishing source code for DOS will benefit a large number of
independent and in-house developers creating customized solutions
based on DOS.”
カルデラ、DOSのオープンソースモデルを発表
DR DOS + インターネット = Caldera OpenDOS
ユタ州プロボ — 1996年9月10日 — Caldera, Inc. は本日、世界中のソフトウェア開発者のプレイフィールド(競合環境)をより平等にし、DOS技術およびアプリケーションの継続的な開発を促進する計画の一環として、インターネットを通じてDOSのソースコードを公開配布することを発表しました。個人開発者および業界パートナーの双方に利益をもたらすことを目指すこの取り組みは、オープンなソフトウェア環境を受け入れ、資金提供を行うというカルデラのコミットメントに沿ったものです。カルデラはまた、Caldera OpenDOS(カルデラ オープンディーオーエス)と呼ばれる新製品を含む、DOSの社内開発およびマーケティングの計画についても発表しました。
「DOSは、特にネットワークコンピューティング機器、専用ゲーム端末、組込みシステムなどの分野において、コンピュータ業界の大部分が必要とする技術的・財務的要件を満たし続けています」と、Caldera, Inc. の社長兼CEOである Bryan Sparks(ブライアン・スパークス)は述べています。「DOSのソースコードを公開することは、DOSをベースにしたカスタムソリューションを作成する多くの独立系開発者やインハウス開発者にとって大きな利益となるでしょう」
open source という言葉は、オープンソース教祖が特別な意味を付与する以前から普通に使われていたのだ。
ライセンス形態としてのオープンソースは商標登録されていない
また、「オープンソースは商標が成立しているので、この言葉を使うときは OSI の定義に従うべきだ」というよくあるアレも完全に論破されている。
これなんぞ参照。
むしろ事実は逆で「オープンもソースも一般的なワードなので、ソフトウェアの分野で商標は成立し得ない」というのが正しいのだが、皮肉なことにこの著作権的な常識が強調された結果になったようだ。
まあ、今までがおかしかったんだけどね。
結果
オープンソースはよく宗教や政治的信条(共産党とかさ)に喩えられるが、今回の騒動でその党派的で胡散臭い側面が白日の元に晒され、完全に否定されたようだ。
この点が従来の小競り合いとは違っていたように思う。
猪股弘明

