@masudanaika による個人情報流出ツィート
2018 年に X(当時は twitter)@masudanaika というアカウントが、精神疾患を持つ患者さんの個人情報を tweet したという事件があった。
masudanaika という名称からわかるように、建前的には和歌山増田内科(当時。現在は高槻病院勤務)の増田茂医師の個人アカウントとされていた。ただし、(後で触れるかもしれないが)個人的には、中の人は違う人だったように思う。
関係者の対応が迅速だったので、幸いなことにこの情報は大して拡散せず、大事にはならなかった。
なのだが、「そんなことはない」と言い張る人がいたので(前記事参照)、誤解がないように事実関係をまとめておこう。
私は精神科医なので、各種 SNS でも精神障害を持った人が私の投稿にコメントしてくれることがよくある。
2018 年の冬頃(さすがにここはぼかします)に facebook で OpenDolphin や HorliX に関する投稿をしたのだが、これに反応してくれた人がいた。
仮にAさんとしておきましょうか。
Aさんは、こういった話題に興味があるらしく、この手の話題には決まってコメントをしてくれていた。
こういう反応は嬉しい。ただ、まずかったのは、騒動がおこる2,3日前に「実は、私は◯◯という疾患を持っていて、リハビリも兼ねてプログラミングをしている」と古来より差別の対象になりやすい精神疾患の名を口にし、その疾患に罹患していることを実名でカミングアウトしたことだった。
どうしてこういうことをするのか私には理解に苦しむのだが、@masudanaika が、Aさんのコメント入りの私の限定公開記事のスクリーンショットを twitter 上にポストしてしまっていた。
しばらくしてそのことを私に教えてくれた人がいて、私も @masudanaika の twitter のタイムラインを調べ、当該ツィートの存在を確認した。
A さんが精神疾患を持っていることは、facebook 上の私の投稿の前後を調べれば全くの第三者でもすぐにわかってしまう。悪いことに実名登録だったので、これではすぐに特定されてしまう。
第三者が仮に悪意を持っていた場合、どのように悪用されるかわからない。
これはまずいと思い、すぐに和歌山の精神福祉関係の部署に電話連絡。
担当者は「もし事実なら、増田内科の増田茂医師に連絡してすぐに削除させます」と言い、以下のメールが私に送ってきた。
tweet 一年分。。。
普段であれば、うんざりするようなチェック作業だが、事態が事態だけにそんなことは言っていられない。果たして、なんとか該当のツィートをいくつか見つけた。
そのうちの一つがこれ(↓)。
画像下部にあるコメント欄にその方のコメントがある。
上の図では潰してあるが、もちろん顔写真と実名で書き込んでいる。
正直、血の気が引いた。
なるべくこの騒動は早期に収束させたいと即座に和歌山県の担当部署に連絡。
まもなく、このツィートは削除された。
この他にも厚労省本省にも連絡を入れ指示を仰いだりということはしたのだが、本筋と関係ないのでここでは触れない。
おおよそ、上のような顛末だった。
最初の方で「中の人は違う人」と書いたが、@masudanaika アカウントと実在の増田茂医師がまったく関係ないということではない。
事実、和歌山県の担当者が実在する増田医師に連絡を入れた直後に問題となったツィートは削除されたのだから、増田医師はこのアカウントと無関係ではない。ある程度は管理・運用にはタッチしていたのだろう。
しかし、(医師ならばわかると思うが)臨床系の医師がこんなリスクの多い情報発信をするとは到底考えられない。
また、この時期、増田医師は OpenDolphin というオープンソースの電子カルテの独自バージョン(増田ファクトなどと言われていた)を開発していて、ツィートもそれに関連するものが多い。
しかし、臨床に専従している医師が、本格的な電子カルテの開発やその広報をしている余裕などあるだろうか。なお、現在では、増田ファクトも増田氏自身が開発していたのではなく、違う人の手によるものではないかということを言う人が多いようだ。
なお、増田ファクトはシステムクラフト(広島三原市 代表: 杉原利彦)という業者が取り扱っていた。
おおかた、出入りの業者に運用させていて、普段はノーチェック。行政から連絡が入り、事実を知った増田医師が慌ててツィートを削除させたというのが、本当のところではないだろうか。
実際、この記事にこんな表現がある。
増田医師が一般人の個人情報を流出させた事実もありません
もし、@masudanaika の中の人が増田氏だけだとしたら、上記の経緯で顛末を知っている当事者は、私と増田氏と関係した行政担当者だけになるはずで、第三者が真偽の判断などできるはずもない。
だから、上の記事を書いた人あるいはその関係者(システムクラフトが wiki を荒らした事実はありませんとわざわざ書いていることから、同社関係者だろうか?)が @masudanaika の中の人であり、医師だったらまずしない個人情報の流出を行なっていた可能性が高い。
で、闇雲に否定していると。
いやあ、当の増田氏自身が(行政経由だが)一連の経緯を認めているんだが。
冒頭でこのアカウントの「中の人は違う人だったと思う」と書いたのはそういった理由による。
その後、実在の増田医師は、このアカウントから離れたのではないかと思う。
というのは、現在(2022/12)では、このアカウントのハンドルは Masudana Ika に変わり、アイコンも増田氏の似顔絵から烏賊のイラストに変わっているから。
日本の法律では非医師が医師を名乗ることは許されていないので、それに対する対応なのではないかと思う。
猪股弘明
精神保健指定医
参照記事をよく読むと「システムクラフトのホスティングサービス」云々とやたら詳しい記述があるので、このサイトの運営者は(少なくとも該当記事書いたのは)システムクラフト社の社員でしょう。
あとは、OpenOcean をあたかも商用ソフトのように言っているのだが、有償ソフトとして販売したことは全くない。
(追記)逆にいわゆる増田ファクト(opendolphin-m)は有償になったようだ。
Dolphin プロジェクトと皆川和史
以前にこの記事で OpenDolphin に関して「向う(注:LSC の一部などのこと)も困っているのか人を介して元プロダクトマネージャーの方から、オープンソース版のとりまとめ役になってくれないかという依頼もあった」ということを述べたが、一部の人から「そんなことはない!」みたいな反応があったようである。
どうもこの手の人たちは「人を介して」の部分を読み飛ばして「とりまとめ役になってくれないか」だけに(なぜか)憤りを覚えていたようだ。
「LSC から(直接)とりまとめ役を頼まれた」と書いているのではないのだが?
その「人」が少々話を盛っているかもしれないので、私だって真に受けてはいない。だが、そういう話をふられたことは事実だ。
具体的には、twitter(X) の DM でこんなやり取りが行われていた。
その一部を抜粋する。
air_h_128k_ill 版というのは OpenOcean のことで、処方箋打ち出し機能などを備えていたが、本質的には OpenDolphin-2.7m と同じだ。
LSC が提供していたDcoker 版のドルフィンサーバーと通信し、目立ったバグはなく、ファイルバックアップ機能を有していたことから、当時、かなり人気があったのだ。
ここだけだと「とりまとめ役」というニュアンスは薄いが、会話相手が言うには皆川(和史)氏の希望としては「OpenOcean をベースに増田バージョン(増田ファクト)をマージし、オープンソースとしてメンテしていってほしい」というようなことだったらしい。
会話相手が盛大に話を盛ったかもしれないので、私もこれを額面通りには受け取っていないが、少なくとも「向うも困っているのか人を介して元プロダクトマネージャーの方から、オープンソース版のとりまとめ役になってくれないかという依頼もあった」という表現はそれほど間違っていないと思う。わざわざ「人を介して」と入れているのだから、その程度の文意は汲み取ってほしい。
ところで、今、読み返してみると、当時の混乱ぶりが窺い知れる。
例えば「OpenOcean は元々は増田ファクト」というトンデモな解釈。これは「一部」の人たちの間では、さも真実であるかのように扱われた。
これは完全な間違いで、Fork 順は
LSC Dolphin → OpenDolphin-2.7m → OpenOcean
というのが正しい。増田ファクトは入っていない。
そうでなければ、LSC のドルフィンサーバーと何の齟齬もなく通信できるわけがない。
(ソースコードから検証した内容を『ソースコード嫁』として記事にしました。オープンソース界隈の方からかなり好評のようです)
なぜ、そういったことを言ったのかは、現在なら、ある程度推測はつくが、その詳細を述べるのは、長くなりそうなので、ここでは触れない。が、相当焦っていたのは事実だろう。ドルフィンの担当役員を外され、LSC 自体の経営陣が刷新され、公的にはドルフィンと関われなくなりつつあったのだから。
この話はこれでおしまいなのだが、一応、付け加えておくと、この後、経営陣が刷新され新たに LSC に加わった担当者が直接当方まで会いにきてくれて、「本家リポジトリのメンテナになってくれないか」という依頼があったのは事実です。
OpenDolphin-2.7m は、LSC Dolphin の直系なので、悪い話ではなかったが、HorliX の開発でいっぱいいっぱいでお断りせざるを得なかった。
また、2020 のメドレー譲渡の際にメドレー担当者(マッチョな人、と言えばわかるでしょうか)から、やはりメンテナ就任の打診は(電話でですが)ありました。
これは、私の全くの想像だが、経営陣が刷新された時点で「基本的にはドルフィンはオープンソースをやめる」というのが決まっていたんではないかと思う(実際、2.7 以降、本家のリポジトリ更新はない)。
オープンソースであるが故にとにかく売れていなかった。
私は、かなり詳細なインストール記事を書いていたし、SOSO さんは本家ドルフィンにさらに機能追加した GlassDolphin をリリースしていた(その後、MIA も参入)。
この状況下では、あえて LSC Dolphin を選ぶ理由がない。
しかし、おかしなこと言わなきゃいいのに。。。
HorliX にコメントしてくれるのは嬉しいが、見当はずれとわかったら訂正して欲しいものだ。
実際、上二つのツィートは作成者が勘違いに気がついたかなにかして削除してあるのだから。
誰でもうっかりミスはある。それだけで咎めることは現実世界でもそう多くないと思うし、私も咎めない。
だが、ミスを認められず放置となると話は別だ。
不健全な自己顕示欲は、拗らせると碌なことにはならない。
小山哲央(アーク情報システム)の件
以前に小山哲央という人が OpenDolphin や OpenOcean ひいては開発陣へ誹謗中傷のツィートをしたことがあったのだが(ちなみに当方がこのツィートを発見したのは 2022年末)、諸々あってツィート削除などしてもらった。
しかし、待てど暮らせど正式な謝罪がない。
気乗りしないことだが、先日、かなり強硬な態度で「社会人ならちゃんとしなさい!」的な連絡をさせてもらった。ニュアンス、わかりますよね?
これに関しては、謝罪・訂正らしきものはあった。(アイキャッチ参照)
しかし、その文言はどうだろう?
>2019年3月14日にポストしたGPLライセンスのポストについて、
>ポストの削除をいたしました。
>コミュニティの是正勧告について第3者がコメントをすることは
>不適切な行為でした。
>お詫びすると同時に、今後はこのようなことがないように注意いたします。
確かに「お詫びする」とは言っているけど、じゃあ、元ツィートの「故意に」「違反」しただのといった一方的な攻撃的な表現や「一読をおすすめします」といった自分をさもオープンソースの権威かのように自認した上から目線の表現は何だったの?という話になる。
そこらへんの説明が一切ないから、この内容だと、(私の印象では)法的な意味で「名誉毀損」や「侮辱」に対処したことになってない。
詳しい知識はないが、「事実の真偽に関係なく社会的評価を低下させる」内容であれば「名誉毀損」にあたるはずですよね?
世代的な問題もあるのかそれとも他の理由があるのかわかりようがないが、必要最低限のことしかやろうとしない。
そこらへん、意識してやってるのか、無意識でやってるのか不明だが、やり取りを側から見ている関係者は徐々に呆れていってます。
主だった意見をまとめておくと・・・
法的な問題は置いておいても「第3者がコメントをする」といった表現も、責任逃れのような印象を受ける。
内容はオープンソースに関わる。
オープンソースは、その言葉が示す通り、ソフトウェアのソースコードは公開されている。この場合も Fork 元・Fork 先ともソースコードは全て一般公開されている。
両者の比較からリンク先の記事の論証は極めて甘いことはわかるし、小山自身が事実確認や検証を行うことは可能だ。
しかし、この作業を怠っている。
オープンソースの分野で何ごとかの判断を行いたいなら、まずはオープンソースの流儀に従って自分で検証するのが筋だろう。
実務的な意味でまずいのは、このオープンソースのプロジェクトが電子カルテだったという点だ。
電子カルテというのは、単純に動けばいいというものではない。種々のガイドラインで定められた基準を満たす必要のある極めて実用性の高いソフトだ。
そして、小山がツィートした 2019 頃には、Fork 先のプロダクツは改修が滞り気味で実務的な要求に応えられなくなってきた時期だ。
だから Fork 先の法人自体が「以前に著作権を主張していた人にはもう関与させていないし、今後も関与させるつもりはない。まずは、実務的な要求を満たす改修を優先したい。可能であれば協力してほしい」という方針を打ち出していた。
小山のツィートはこういった努力に水を指す行為だ。
「オープンソースの開発者や開発方式には敬意を払うが、オープンソース『信者』は嫌いだ」という人は多いが、その理由が今回の一件で分かったような気がする。
OpenDolphin → OpenOcean → ?
ところで本ブログでたびたび言及されている電子カルテ OpenDolphin だが、作り直した方がいいという意見もある。
私は OpenOcean 2.0 とか呼んでいたし、ベンダーさんもこの種の提案をした人はいる。
OpenDolphin 自体は現在でも使えるし、(ブラウザ型が嫌いな人は特に)気に入ってくれている人は少なからずいるので、そういった人にとっては「作り直すというのは何で?」だろう。
というわけでその辺の解説。
(続く)
猪股弘明